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『少年のさつまいも』

蓮華草
少年は貧しい中学生である。幼くして両親を失い、苦学のうちにこれまできた。

あるとき、学校に支払う学費に困り果てた少年は、サツマイモの買い出しに出かけ、自分の口にすら入らないそのイモをふかして、闇市に出かけたのである。

終戦直後のこと、飢えをいやすことを求めて、闇市には多くの人が行きかっていた。

少年は飢えと寒さと恥ずかしさとのために防空ズキンを目深にかぶって、地面にすわっていた。だが、少年が並べたイモをだれひとり買う者はなかった。少年は寒さの中にただすわっていたのである。

そのとき、ふと声があったのである。
「坊や、おイモをおくれ」
見上げると、初老の男であった。少年が一袋のイモを手渡そうとすると、その初老の人は微笑んでかぶりをふった。
「坊や、おじさんはイモが好きなんだよ。一袋ではとても足りない。みんな欲しいんだよ」
少年はその幸運をよろこび、飛んで家に帰った。

それから長い年月が流れている。いまは中年の男となった当時の少年は、ときおりその初老の人の姿を瞼に描くのである。彼は、いまは知っているのだ。その人が本当はそれほどサツマイモが好きでなかったということを。

その少年を筆者におきかえることも自由である。また、あなた自身におきかえてみることも自由である。
ただ、ユーモアというものがサツマイモのあたたか味とともに、かくも人の心に永遠のあたたかさを残すものであることを、この話から知ることができれば十分である。

(千名 裕)

今日はちょっと長い文章を引用しましたが、これは千名 裕氏著の「ユーモアつきあい術」という書籍に書かれていました。
この少年はおそらく著者(千名 裕氏)で、その著者の実体験だと思われますが、もう何年も前に読んだこの本のこの一節が、今でも強烈にあたたかい話として残っていたので、ここで取り上げました。
何回読んでも心があったかくなるいい話だなって感じます。

-座右の銘-